「識字率」と「周辺」。エマニュエル・トッドの理解を深める2つのキーワード
Q2:鹿島先生がとくにひかれたトッド理論の軸、エッセンスについて教えてください。
「辺境に古いものが残って、中心は変化しやすい」
トッド自身は当初気づいていませんでしたが、その分類にあらわれた「辺境に古いものが残って、中心は変化しやすい」という原則は、歴史の不明な部分を解き明かすヒントになります。
例えば韓国の家族の形です。韓国では、同性同本不婚――つまり同じ性、同じ出身地の人とは結婚できない――の規範があります。ゆえに韓国は非常に強い外婚制と認識されますが、じつは周辺を見てみると同性同本不婚の原則はそれほど強くない。
日本における内婚制を考える場合にも適用できます。例えばイトコ婚です。それが日本の周辺地域である沖縄や離島地域で、伝統的に根づいているかと言えばそうではない。よって、イトコ婚は比較的新しいものではないか、という分析が成り立つ。
少し混乱されるかもしれませんが、実は日本の直系家族を考える場合にも周辺部分を見ると直系家族は普通ではなく、むしろ例外に属する。ということは、直系家族もまた新しいスタイル※と考えることができます。
(※編集部注 日本は「直系家族型」に分類されるが、原初をたどれば日本列島で最初に確認されるのは、アイヌと沖縄にその痕跡を見ることができる「起源的核家族」、つまり「双処居住型核家族」と「母方居住核家族」)
歴史の不明な部分を周辺をあたることによってある程度復元できる。素晴らしい分析ツールが増えたんです。